育児で育つ父親の神経回路? 米プリンストン大

asahi.comサイエンスニュース
2006年08月21日

 「父性」を支える神経回路は、子育てを通じて育まれていく?――。あくまでも霊長類マーモセットの話だが、育児に直面した雄は、神経細胞の構造が変わっていくことを米プリンストン大グループが見つけ、21日付米専門誌ネイチャー・ニューロサイエンスのオンライン版で発表する。

 マーモセットは、雄が育児をすることで知られている。赤ちゃんを背負うなど積極的に育児をし、特に生後1カ月は、雄が生活の7割以上の時間を赤ちゃんと過ごす。

 グループは、育児中の雄と、そうではない雄の脳の領域を比べた。子育て中の雄は、バソプレシンという物質を受けとめるたんぱく質が増えていた。バソプレシンは、「きずな」「情愛」などとかかわりが深い信号を伝える働きがあり、例えばネズミの脳でこのたんぱく質を増やすと、1匹の雌を好み、他の雄を攻撃するようになったという報告がある。マーモセットの観察では、たんぱく質は、子の月数が少ない雄ほど多かった。

 さらに、神経細胞の細胞同士がつながる構造も、密度が高くなる変化が生じることがわかった。父と子のきずなが強まると、子育てにふさわしいきめ細かな神経回路ができていく可能性があることを示しているという。