進化 : こいつは家族ではない

February 15, 2007

近親交配は有害であり、それを避けるために多くの動物で遺伝的近縁度を評価する機構が進化してきた。そのような機構がヒトに組み込まれているかどうかについては今もって論争中だが、兄弟姉妹の行動の研究から、こうした機構があるとする説を支持する証拠が見つかった。この研究によると、ヒトは「血縁指標」を算出するために2種類の手がかりを用いているらしい。相手が自分より若くて弟妹にあたる可能性がある場合には、その相手が自分の母親とどれくらいの時間を共に過ごしているかを観察する。相手が自分より年上で兄姉にあたりそうな場合には、自分がその相手とどれくらいの時間を共に過ごしてきたかを評価するのだ。

遺伝的近縁度を見極める機構は多くの種で進化しているが、ヒトにこうした機構があるかどうかについては、いまだ論争中である。今回我々は、兄弟姉妹から得たデータに基づき、血縁感知機構がヒトに存在するという仮説を支持する3系統の証拠を報告する。これらの機構は、顔見知りの相手それぞれに関して、自身と相手との対について遺伝的近縁度の推定値に相当する単一調整変数(血縁指標)を計算することにより機能する。この系で使われているキュー(合図)の特定は、近縁度のキューと考えられるものに対する各被験者の経験を、系が進化させた機能に関連する3つの出力(兄弟姉妹間の利他行動、自らの兄弟姉妹と自身との近親婚に対する抵抗感、第三者の兄弟姉妹間の近親婚に対する道徳的反感)の変動と定量的にマッチングさせることで行った。予想どおり、ヒトの血縁感知系では血縁度を計算するために、世代にわたって有効とされる2種類のキューが用いられている。それらは、顔見知りの相手が出生後に自身の生物学的な母親と一緒に過ごして世話を受けていたかどうか、そして、その相手と自身との同居期間である。