「信用」も物質による?

nature 2005年6月2日号

 人どうしの信用にオキシトシンがかかわっていることが明らかになった。
 信用は,友情や家庭,社会生活などに欠かせないものだ。しかしその生物学的基盤についてはほとんどわかっていなかった。
 スイス,チューリッヒ大学のコスフェルド博士らは,「オキシトシン」という物質が人どうしの信用を高めるはたらきをもつことを明らかにした。博士らは,投資者が受託者に掛金をあずけ,受託者がそれを元手にもうけた金の一部を投資者に返還する「信用ゲーム」を被験者に行った。
 鼻腔内にオキシトシンを投与された投資者は,そうでない場合と比べ,あずける金額が大きかった。しかし受託者が存在せず,投資者への返還金額が無作為に決められる「リスクゲーム」を行ったところ,オキシトシンを投与してもあずける金額はふえなかった。すなわちオキシトシンは,リスクをさけようとする性質を克服するのではなく,相手を信用したことにより生じる社会的リスクを受け入れるように作用する,と博士らは考えている。

下側頭皮質と顔認知

Nature 442, 692-695(10 August 2006)
Microstimulation of inferotemporal cortex influences face categorization
Seyed-Reza Afraz, Roozbeh Kiani and Hossein Esteky

霊長類の大脳皮質のうち、下側頭(IT)皮質とよばれる領域の電気生理学的な直接活動記録と機能的磁気共鳴画像法による測定から、この領域が顔のような高度に複雑な視覚刺激に選択的に応答することが示され、この領域が視対象の認識にかかわっていると考えられるようになったが、今回、この説を直接証明する結果が得られた。顔に選択的に応答するニューロンと顔の認識との間に、直接のつながりが見つかったのである。サルのIT皮質にある顔選択的ニューロン集団に微小電気刺激を加えると、見た画像を顔とみなすような方向に強いバイアスがかかる。この結果は、IT皮質の神経活動と視対象の認識を結びつけただけでなく、視対象の形状を神経がどう符号化しているのかを探る今後の研究の足がかりにもなる。

フレーミング効果、選択の偏り、合理的意思決定、そして脳

Science(8/4号)に載っていた論文
Frames, Biases, and Rational Decision-Making in the Human Brain
Benedetto De Martino, Dharshan Kumaran, Ben Seymour, Raymond J. Dolan

人間の選択行動は、選択肢の提示様式に大きく左右されます。この「フレーミング効果」は、人間の合理的判断の大きな妨げになりますが、その背景にある神経生物学的メカニズムは未だ明らかでなかったそうです。この論文では、フレーミング効果が扁桃体の活動と関連していることを見出しています。この発見は、意思決定のバイアスには、感情系が重要な役割を果たしていることを示唆しています。また、眼窩側および内側の前頭前野の活動が大きい被験者ほど、フレーミング効果が弱まることがわかりました。これらの知見は、人間の選択行動のモデルに感情プロセスを組み込むことの重要性を強く示唆しており、さらに脳(前頭前野)がこのようなバイアスの影響をなんとか調節して、合理的な意思決定へと近づいていく様子の一端を明らかにしたといえるでしょう。

サル下側頭皮質の単一ニューロンによる標準像に基づいた顔の符号化

Nature(8/3号)に載っていた論文より

Norm-based face encoding by single neurons in the monkey inferotemporal cortex
David A. Leopold, Igor V. Bondar and Martin A. Giese

見慣れた顔について、人物同定、気分や意図の推定など、さまざまな情報をすばやく把握することは、霊長類に共通のすぐれた機能の1つです。マカクザルの下側頭皮質にある多くの視覚応答性ニューロンは、顔に選択的に応答し、限定された個体の顔にしか応答しない場合もありますが、網膜上の像の大きさやその他の性質に対する感受性はほとんどみられません。この論文では、マカクザル下側頭皮質前部の顔応答性ニューロンが、顔認知の標準的次元にチューニングされていることを示しました。標準像に基づく似顔絵描写の心理物理学的手法を用いて、写真のようにリアルなヒトの顔の個体特徴に変更を加えていったところ、下側頭皮質前部ニューロンはほとんどの場合、個体性のあいまいな平均的な顔の辺りにチューニングされていることがわかりました。この結果は、この領域の顔選択的な応答が、実際に見ている顔と内的基準となる標準顔との構造の差を反映した画像比較によって形作られているとする考え方に一致します。この発見は、下側頭皮質ニューロンのチューニングと顔の同一性認知の心理モデルを結びつけるものであるといえるでしょう。

身内のみが知り得る秘訣をオンラインでシェアする方法

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http://www.nature.com/ndigest/journal/v3/n8/pdf/ndigest.2006.060826.pdf

実験心理学って、こういう考え方にあまりなじみがない人が多いような。
そもそも追試できるかどうかに興味ないなんて人もいるし。
心理学者である前に科学者でありたいと思う今日この頃。

はじめまして

自分への覚書がいろんなところに散らばっていて、ちっとも覚書としての機能を果たしていないので、このページを利用することにしました。

ですので、あまり人様にお見せできるような内容にはならないと思いますが、万一見つけてしまい、かつ何か言いたいことなどありましたら、コメントなどつけてもらえるとうれしいです。