「信用」も物質による?

nature 2005年6月2日号

 人どうしの信用にオキシトシンがかかわっていることが明らかになった。
 信用は,友情や家庭,社会生活などに欠かせないものだ。しかしその生物学的基盤についてはほとんどわかっていなかった。
 スイス,チューリッヒ大学のコスフェルド博士らは,「オキシトシン」という物質が人どうしの信用を高めるはたらきをもつことを明らかにした。博士らは,投資者が受託者に掛金をあずけ,受託者がそれを元手にもうけた金の一部を投資者に返還する「信用ゲーム」を被験者に行った。
 鼻腔内にオキシトシンを投与された投資者は,そうでない場合と比べ,あずける金額が大きかった。しかし受託者が存在せず,投資者への返還金額が無作為に決められる「リスクゲーム」を行ったところ,オキシトシンを投与してもあずける金額はふえなかった。すなわちオキシトシンは,リスクをさけようとする性質を克服するのではなく,相手を信用したことにより生じる社会的リスクを受け入れるように作用する,と博士らは考えている。