サル下側頭皮質の単一ニューロンによる標準像に基づいた顔の符号化

Nature(8/3号)に載っていた論文より

Norm-based face encoding by single neurons in the monkey inferotemporal cortex
David A. Leopold, Igor V. Bondar and Martin A. Giese

見慣れた顔について、人物同定、気分や意図の推定など、さまざまな情報をすばやく把握することは、霊長類に共通のすぐれた機能の1つです。マカクザルの下側頭皮質にある多くの視覚応答性ニューロンは、顔に選択的に応答し、限定された個体の顔にしか応答しない場合もありますが、網膜上の像の大きさやその他の性質に対する感受性はほとんどみられません。この論文では、マカクザル下側頭皮質前部の顔応答性ニューロンが、顔認知の標準的次元にチューニングされていることを示しました。標準像に基づく似顔絵描写の心理物理学的手法を用いて、写真のようにリアルなヒトの顔の個体特徴に変更を加えていったところ、下側頭皮質前部ニューロンはほとんどの場合、個体性のあいまいな平均的な顔の辺りにチューニングされていることがわかりました。この結果は、この領域の顔選択的な応答が、実際に見ている顔と内的基準となる標準顔との構造の差を反映した画像比較によって形作られているとする考え方に一致します。この発見は、下側頭皮質ニューロンのチューニングと顔の同一性認知の心理モデルを結びつけるものであるといえるでしょう。