神経:軸索上のスパイク発生部位は両耳間時間差の検出感度を高める

Nature 444, 1069-1072 (21 December 2006)

Axonal site of spike initiation enhances auditory coincidence detection

Hiroshi Kuba1, Takahiro M. Ishii1 and Harunori Ohmori1

1. Department of Physiology, Faculty of Medicine, Kyoto University, Kyoto, 606-8501, Japan

ニューロンは、軸索起始部または軸索初節でスパイクを発生させる。しかし、スパイク発生の部位が、ニューロンの活動や機能に対してどのような影響をもつかに関しては、まだよくわかっていない。鳥類の層状核では、ニューロンは音源定位のために刺激入力の同時検出器として働いていて、それぞれの細胞の特徴周波数(CF)ごとに、両耳への刺激の到達時間の差(ITD)を符号化している。今回、ヒヨコの層状核で、軸索上のスパイク発生部位の細胞体からの距離が細胞の CFごとに異なっており、これによって各CFで最高のITD感度が実現されていることを見いだした。高いCF(2.5〜3.3 kHz)や中程度CF(1.0〜2.5 kHzの神経細胞)のニューロンでは、Na+チャネルは細胞体には存在せず、細胞体から20〜50 m 離れた軸索上の狭い範囲にクラスターをなしていた。一方、低いCF(0.4〜1.0 kHz)のニューロンでは、軸索上のより細胞体に近くてやや広い範囲に集合していた。つまり、ニューロンは、そのCFが高いほど遠い部位でスパイクを発生する。この結果、順行性スパイクも逆行性スパイクも、細胞体での振幅は高・中CFニューロンで小さく、低CFニューロンで大きくなる。コンピューターシミュレーションによると、各CFでスパイク発生の閾値が下がり、ITD感度が上がるよう、スパイク発火部位の位置が最適化されていることがわかる。特に高 CFニューロンでは、スパイク発生部位が遠くにあることで、発生部位が細胞体や樹状突起から電気的に隔離されるため、また軸索の低域通過フィルター機能によってシナプス電位の時間的加算が減弱し、Na+チャネルの不活性化が減少するために、ITD感度が改善されている。